本内容は知識、経験のある医療、介護、福祉専門職など(以下専門職)の方向け専用の情報です。
本方法を行う際は専門職が安全性を十二分に確認、検証の上必ず専門職の方が行う事。もし仮にアドバイスを受ける場合は専門職の方が安全性を十二分に確認、検証の上行う事。
下記使用図は横から見てわかりやすいようにアームサポート(アームレスト)をはねあげてありますが実際に本方法を行う際は必ずアームサポート(アームレスト)をご使用ください。(イラストではわかりやすいように描いております。)
Contents
座圧の変更と姿勢の修正
ケアが必要になっても今までの生活をできるだけ再現することが大切です。そのためには日中起きて生活することをあたり前とすることを目指します。可能な限り長い時間ベッドを離れて過ごすということは、いすに長時間座って過ごすことが多くなることを意味します。そこで車いすに座っているときの座圧を変えるということが大切になります。また、上肢機能を適切に利用することや褥瘡(じょくそう)予防の意味からも姿勢を適切に維持することが必要です。座圧を変える
どんなに良いクッションを利用していても1時間も座圧を変えない同じ姿勢で座り続けることは、座っている人に大きな苦痛を与えます。自分で体を動かせる人は、少し時間がたつと自然に体を動かして座圧を変えています。
試しに車いすに座ってじっとしてみてください。すぐにこの苦痛は理解できるでしょう。
また、自分で体を動かせない人の場合は、座圧を介助者が変える必要があります。
車いす上での座圧が容易に変更できる介助の方法を知っておくことが大切です。
※ベッドなどに移乗すればまったく異なる接触圧に変えることができますが、移乗介助が容易にできる環境が必要になります。
1)標準型車いすの場合
- 車いすはブレーキを掛けます。
注)ブレーキの掛け忘れまたはブレーキが緩んでいると車いすが転倒します。 - 車いすの後ろにいすを置きます。
注)キャスターなどがついた動きやすいいすは不可。 - 介助者はこのいすに座って、ティッピングレバーに片足を置きます。
この足で車いすが後ろに動かないように抑えます。 - 介助者用のハンドルを持って後ろに引きます。(図1)
介助者は膝を伸ばして、車いすの背を自分の大腿の上に載せます。(図2)
利用者の頭を胸で支えればさらに利用者は安全で安心して快適になるでしょう。
この姿勢をしばらく維持することによって、今まで臀部にかかっていた利用者の体重を背に分散することができます。
さらに車いすといすの距離を変えることによって、利用者の臀部にかかる圧を変えることができます。すなわち、この距離を大きくすれば、より体幹が寝るので臀部の体重はより小さくなります。
容易に車いすのキャスター上げができます。車いすのキャスター上げはハンドルを後ろに引けば小さな力で上げることができるので、いすに座っていれば自然にハンドルを後ろに引くことになり、楽に上げられるはずです。- 車いすを元の態勢に戻すときは、ハンドルを持って起こしますが、この時、静かにキャスターを着地させます。介助者はティッピングレバーに足を置いて座を起こす角度を調整します。
- 上肢機能が阻害され、上肢を適切に動かせなくなります一般的に車いすに座る人の中には、上肢機能も障害を受けている場合が多くありますの
で、姿勢がくずれると、残された機能がさらに障害を受けます。本来自分でできることができなくなったり、しにくくなったりします。食事動作などが代表的かもしれません。 - 褥瘡(じょくそう)の原因になります車いす座位では、本来圧力のかからない部位(例えば仙骨部)に体重がかかり、車いすに座っていることによって褥瘡を形成したりします。特に仙骨部の褥瘡は寝ていて作るとは限らず、車いす座位が原因になっていることが多くあります。また、体幹が斜めになったまま長時間座ると、車いすの構造部材(例えばスカートガードやパイプ)に接触し続け、褥瘡を形成することもあります。
- 関節の変形や拘縮の原因になります座骨が前に滑った状態で座り続けると骨盤が後傾し、脊椎が後弯します。この姿勢が固まればいわゆる円背になってしまいます。また、体幹が傾いた姿勢を継続すると側弯の原因になりかねません。
- 筋緊張が亢進されます崩れた姿勢は利用者にとって苦痛であり、これが原因で筋緊張が亢進されることもあります。筋緊張が強くなると、関節の可動域制限などが生じます。
- 車いすはブレーキを掛けます。
注)ブレーキの掛け忘れまたはブレーキが緩んでいると車いすが転倒します。
注)折った山側が奥になります。
スライディングシートを二つ折りにして、大腿の下に敷きこみます。(図3)
介助者は利用者の前に立ち、介助者の膝と利用者の膝の間にクッションを挟みます。
(図4)
注)お尻の下にスライディングシートが差し込まれるとお尻が滑りやすくなりますので前方に落下しないよう注意しましょう。
注)必ずアームサポート(アームレスト)をお使い下さい。
※イラストではわかりやすいように描いております。
もしクッションがなければ枕でもかまいません。枕やクッションを挟むことによって、安定して以下の作業ができるとともに、利用者と介助者二人の膝がぶつかり合う痛さが回避できます。利用者を前傾させ、介助者の膝を前に出すようにして、利用者の膝を押すと、容易に腰を深く座らせることができます。(図5)
注)必ずアームサポート(アームレスト)をお使い下さい。
※イラストではわかりやすいように描いております。
軽く動かないときはシートの差し込みが不足している場合が多いので要確認してください。きちんと座骨の下に差し込んでください。また、クッションが柔らかい場合にはこの方法が上手にできないこともあります。その場合にはb)で記述する方法で試みてください。シートを引き抜くときは、利用者の体が前に滑らないように介助者は片手で膝を押さえます。一番下のシートをゆっくり前方に引けば容易に引き抜くことができます。
(図6)
注)必ずアームサポート(アームレスト)をお使い下さい。
※イラストではわかりやすいように描いております。
片側ずつシートの間に掌を下にして手を入れて、座骨の下まで差し込みます。座骨はとがった骨ですから、この下に手が入ればすぐにわかります。- 車いすはブレーキを掛けます。
注)ブレーキの掛け忘れまたはブレーキが緩んでいると車いすが転倒します。
注)折った山側が下になります。
利用者の背中と車いすの背もたれの間に二つ折りにしたスライディングシートを挟みます。(図7)
シートが背中全体を覆っているようにします。
注)必ずアームサポート(アームレスト)をお使い下さい。
※イラストではわかりやすいように描いております。
シートの車いす背側の端を持ち、座面の隅の隙間を利用してシートを座面まで差し込みます。両側同じようにします。(図8)- 車いすの後ろにいすを置きます。
注)キャスターなどがついた動きやすいいすは不可。 - 上述した座圧を変えるときと同様に、車いすの後ろにいすを置き、車いすを介助者の大腿の上に倒す。
注)必ずアームサポート(アームレスト)をお使い下さい。
※イラストではわかりやすいように描いております。
このとき、いすはできるだけ車いすから離します。遠くした方が車いすの背が寝るので、この後の作業が容易になります。(図9)- 介助者は膝を曲げないようにします。(膝が曲がっていると利用者の背中に膝が当たり、利用者の背が痛くなる場合があります。)
※介助者の大腿部で利用者の体重を支える感じです。
注)腋の下を引き上げると、利用者の肩関節に負荷を与え、快適ではなくなるとともに、場合によっては肩関節を痛める可能性があります。
注)必ずアームサポート(アームレスト)をお使い下さい。
※イラストではわかりやすいように描いております。
介助者は利用者の胴体を両手で挟むように持ち、頭方向に引き上げます。(図10)
座っている状態でバスタオルを利用者の大腿の下に敷き込んでおきます(図11)。
注)必ずアームサポート(アームレスト)をお使い下さい。
※イラストではわかりやすいように描いております。
胴体を両手で引き上げることが難しい場合にはあらかじめバスタオルを用意します。
(図12)。
注)必ずアームサポート(アームレスト)をお使い下さい。
※イラストではわかりやすいように描いております。
車いすの背を倒したら、このバスタオルを上に引き上げると、利用者の体を移動できます。※バスタオルを引くときのコツは、介助者は両前腕を利用者の背中の下に差し込むようにしながら(両肘を内側に絞り込むようにしながら)引くと容易に動かせます
注)必ずアームサポート(アームレスト)をお使い下さい。
※イラストではわかりやすいように描いております。
車いすをもとに戻し、シートを車いす側の背中から上に引き抜きます(図13)
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2)ティルト・リクライニング車いす(姿勢変換型車いす)の場合
ティルト(座面を傾ける)ができる車いすはティルトするだけで臀部にかかっていた体重が分散されます。※ 座圧の分散だけが目的の場合は、リクライニング(背を倒す)機能がついている車いすのリクライニング機能は利用しない方がよいでしょう。リクライニングは利用者の姿勢を崩しやすくしますし、背のずれも生じてしまいます。
リクライニングしかできない車いすはリクライニングさせると体重は分散できますが、起こしたときに姿勢が崩れますので、後述(姿勢を修正するC姿勢変換型車いすの場合)する介助が必要になります。
姿勢を修正する
車いすにはきちんとした姿勢で座ることが大切です。姿勢が崩れていると、いくつかの問題が生じます。発生しやすい問題点
このようなことから、車いすに座ったら必ず姿勢を最適になるように介助者が配慮する必要があります。しかしきちんと座っていても時間経過とともに必ず姿勢は崩れます。姿勢が崩れたら、これを修正する介助が必要になります。
このためには、姿勢の崩れに注目するとともに、容易に姿勢を修正する方法を身に着けることが大切です。姿勢の崩れには、座骨の前滑り、脊柱の傾き、骨盤の傾きなどがあります。
1)座骨の前滑りを修正する場合
人は骨盤を直立した姿勢で座らない限り、バックサポート(背もたれ)に寄りかかって座ると、自然に座骨は前方に滑っていきます。これは解剖学的に、また力学的に説明がつく自然な現象です。この座骨の前滑りを防止するためにクッションや車いすを調節しますが、それでも時間経過が長くなると座骨は前に滑ります。座骨が前に滑っていることに気がついたら、自分で治せる人は自分で、自分ではできない人は介助者が修正します。
介助で修正する場合、介助者は力ずくで修正をしてはいけません。介助者が力ずくで修正をしようとすると、介助者が腰痛になる可能性や、利用者に苦痛を与えてしまうというリスクも生じてしまいます。
スライディングシートを利用するなどして、利用者は安全・快適に、介助者は腰を痛めることのない容易に姿勢修正する方法を身につけましょう。
★ポイント「スライディングシートを利用する二つの方法」
a)体幹を前傾できる人の場合(標準型車いす)
下記使用図は横から見てわかりやすいようにアームサポート(アームレスト)を外してありますが実際に本方法を行う際は必ずアームサポート(アームレスト)をご使用ください。(イラストではわかりやすいように描いております。)
スライディングシートはサイズ、形状、滑り具合などが違うたくさんの種類があります。本方法に適応したものを専門家に相談してお使いください。
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b)体幹を前傾できない場合(標準型車いす)
下記使用図は横から見てわかりやすいようにアームサポート(アームレスト)をはねあげてありますが実際に本方法を行う際は必ずアームサポート(アームレスト)をご使用ください。(イラストではわかりやすいように描いております。)
スライディングシートはサイズ、形状、滑り具合などが違うたくさんの種類があります。本方法に適応したものを専門家に相談してお使いください。
●詳しい動画はこちらから
c)ティルト・リクライニング車いすの場合(姿勢変換型車いす)
座面と背を可能な範囲で起こします。上述した方法でスライディングシートを背中側に敷き込みます。
ティルトとリクライニングを倒し、レッグエレベーション機能のついている車いすは脚部も上げます。利用者の胴体や臀部をもって体を頭方向に移動させます。
レッグエレベーション、リクライニング、ティルトをもとに戻し、スライディングシートを引き抜きます。
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2)座面の中央に座っていないことによる体幹(脊柱)の傾きを修正する場合
スライディングシートはサイズ、形状、滑り具合などが違うたくさんの種類があります。本方法に適応したものを専門家に相談してお使いください。
注)アームサポート(アームレスト)が外れない車いすではこの方法はできません。
スライディングシートを二つに折って、お尻の下に敷き込みます。(図16)
注)折った山側が奥になります。
骨盤を両手で持ちシートを差し込んだ方向に体幹を倒して、お尻が座面中央になるように修正します。(図17)
姿勢の修正が終わりましたらアームサポート(アームレスト)を必ず元に戻してください。
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ポイント
上記のような座圧の変更と姿勢の修正をより快適に安全に行うためのポイントです。※ご自身の体格に合った車いすをお選びください。
※車いすのクッションは座面に合ったサイズをお選びください。
※マイぴたクッション(モジュールタイプ、座骨安定材)を使用する事で前すべりを防止することが出来るので本方法をより快適に安全に行える場合もございます。
免責事項
※本内容はあくまでも一例であり、全ての方に適合する方法ではありません。※本内容は必ず専門識の方とご相談してください。事故や怪我の原因になります。
※本内容によるトラブルや怪我、事故等について弊社及び関係者は一切の責任を負いかねます。
※本内容についてのお問い合わせは承っておりません。ご了承の程宜しく御願い申し上げます。